〒657-0864 神戸市灘区新在家南町4丁目1-31

探究学習

探究学習と従来の学習の違い

教師の役割

従来の学習では、教師が「知っている人」、児童が「知らない人」という明確な線引きの下で授業が行われてきました。「知っている人」が「知らない人」に教えます。
先生から教えてもらったことだけを覚えれば良く、それが成績として反映されます。
しかし探究学習では、教師と児童が同じ視点に立ち、知らないことに興味関心を持ち、疑問を抱き、共に自調自考しながら答えを見つけ出します。
教師は「ティーチャー」ではなく「ファシリテーター」(進行役)だという表現もよく見られます。

「知っていること」を基礎に「知らないこと」に挑む

児童が知らないことを教師が教えるのではなく、探究学習では、まず児童が何を知っているかを探り、それを基に探究することで新たな発見と感動を得ます。
例えば、「エネルギー」について学ぶ単元では、「機械を長く使っていると電池がなくなる」、「磁石はくっつくときと離れるときがある」などは、身の回りの生活から既に知っています。知っていることを引き出すことで、それに関連する知らないことに関心を持って探究できます。
「電池ってどんな仕組み?」、「なぜ磁石に物がくっついたり離れたりするの?」などの疑問を抱き、それを自分で考え、調べ、時には推論を立てたり実験をしたりして答えを探ります。

KWLチャートの活用

探究学習では「KWLチャート」というものを活用しています。
K=Know(知っていること)、W=Want to know(知りたいこと)、L=Learned(知ったこと)を意味します。
探究のユニットの間、知っていること、知りたいこと、知ったことを自由に付箋に書いて貼っていきます。教師はそれらを読みながら授業を進めていきます。既に知っていることを一から教える必要はなく、知りたいことを中心に学習を進めることによって、ユニットを通して関心を持続して探究に取り組めます。
教師も、「本当はこういうことを学んでほしい」と思えば、自分で「電気が流れるものと流れないものってなんだろう?」などと付箋に書いてチャートに貼ることもできます。
ユニットが進むにつれて、初めは何もなかったL(知ったこと)の部分がどんどん埋まっていくよう、資料や具体物を用意して児童の探究をサポートします。

実生活との関連

ある小学校でこのような道徳の授業が行われました。
「順番を守る大切さ」を教えることが目的でした。「クリーニング屋さんに、まずウサギさんが服を持ってきました。次にキツネさんが服を持ってきて『すぐにいるので、先に洗ってください』と言いました。
さらにタヌキさんが服を持ってきて『これ友達に借りていて返さないといけないので、先に洗ってください』と言いました。さあ、誰のを先に洗うべきでしょうか。」答えはウサギさん。「どんなことがあっても順番をしっかり守らないといけないから」だそうです。
しかし実際はどうでしょう。地域のクリーニング屋さんに聞いてみると、必ず持ってきた順番通りに洗うところもあれば、臨機応変に対応するところもあるでしょう。早く洗うのに追加料金を取るところもあるでしょう。
結局は空想の話で実生活には何の役にも立ちません。当園でついこの前行われた授業では、「秩序」の大切さを教えるために、子どもが来る前に先生が教室の椅子と机をばらばらに置きました。
ホワイトボードも教室のど真ん中に置いて、普段決められている役割も全部一人の子に押し付けて、何もなかったかのように授業を進めました。不自由に感じた子どもたちはそれについて話し合いました。不自由さを実際に体験することで「秩序」という概念について考えることができました。他にも実生活の中で「時間」「交通ルール」などの「秩序」を見つけることもできました。
その一部として、順序を守ることの大切さを理解させることもできました。

児童自ら意味を構築していく「構成主義」

探究学習は単に調べ学習ではありません。クラスで議論をすることでもありません。子どもたちが既有知識を基に新しいことに対して自分たちで意味を構築していく「構成主義」という教育論に基づいています。
児童が辿り着くべき答えを限定せず、あらゆる可能性を模索させ、結論を導かせます。勿論それらの結論が正しいかどうかも、自分自身で振り返って検討、分析させ、次の学びに繋げていきます。
これを通して自分の学びに責任を持ち、学習をさせられているとは感じず、自ら進んで学び、学校を去った後もずっと学び探究し続ける心を養います。
探究学習、構成主義など、聞き慣れない難しい概念かもしれませんが、学校としても新たな挑戦であり、子どもたちが生きる時代に必要な素質を身に付けるために教師も日々学びながら成長しています。またご家庭でも、些細なことにも疑問、関心を持ち、広い視野を持って世界を見られるような刺激と経験を与えることで、さらに探究学習が楽しく有意義なものとなります。
探究学習や構成主義を更に深く知るための推薦図書10冊をご紹介します。
興味のある方は是非お読み下さい。子どもたちのために、共に学び成長できればと思います。

POI(探究プログラム、Programme of Inquiry)

POI(探究プログラム、Programme of Inquiry)とは、探究のカリキュラムを全体的にまとめたものです。教師全員が共同作業で作り上げます。PYPでは6つの「教科の枠を超えたテーマ」があります。「私たちは何者なのか」、「私たちはどのような場所、時代に生きているのか」、「私たちはどのように自分を表現するのか」、「世界はどのように動いているのか」、「私たちはどのように自分たちを組織しているのか」、「地球の共有」の6つです。各学年の児童が年間を通して6つのテーマを、それぞれ1つの探究ユニット(UOI)として学習します。

pio



校外学習

関西国際学園 初等部では、ほぼ毎月遠足や校外学習に出かけます。美術館、博物館、水族館、動物園など、そのときのUOI や各学科で学んでいる内容に関連した施設を選んで行きます。
※UOI:教科の枠を超えたテーマに関連するセントラルアイデアを中心に探究を進めていく学習



ジーニアス・アワー

各学年週に2 時間行われる「ジーニアス・アワー」の元々の出どころはグーグル本社で行われた「20%タイム」という取り組みです。グーグルは、従業員の技術者たちに毎週の就業時間の20%を使い、自分たちが個人的に興味を持っているプロジェクトを企画するよう奨励しました。本来の目的は、グーグルの本業での仕事の効率の向上と仕事に対する満足感の向上でしたが、この取り組みによってここ数年でグーグルが世に出した多くの優れた商品のアイデアが生まれたのです。
関西国際学園では、児童がもっと決められた探究のカリキュラムから離れて自由に探究する時間を確保したいと思っていました。そこでグーグルの「20%タイム」のように毎週の時間割の中の決まった時間をそれに充てることにしました。
新しいスキルを習得したり、持っているものを磨いたり、何かを組み立てたり、一から創造したり、関心のあるものを探究したりします。各児童はジーニアス・アワーでの目標を立て、その目標に到達できるよう教師やスタッフがサポートしていきます。
現在多くの子ども達がプログラミング、ストップモーションアニメーション、ゲーム作り、サッカー技術、音楽の作曲などさまざまなプロジェクトに挑戦しています。ジーニアス・アワーを通して子ども達がさらに自立し、創造性を養い、新しいことを学ぶのは楽しいという意識を生涯持ち続け、21 世紀を担うリーダーになっていくことを期待します。